「カスタマージャーニーを分析したから、UIは完璧のはずなのに…なぜユーザーは離れる?」
その原因は、「顧客が買うまで」の設計に固執し、「ユーザーが使い続ける体験」を見逃しているからかもしれません。
カスタマージャーニーとユーザージャーニーマップは、目的・対象・分析範囲が全く異なるツールです。
この記事では、両者の混同が生むUI設計の矛盾と、具体的な解決策を解説します。
1. カスタマージャーニーとユーザージャーニーマップは「別物」
【定義の違い】
- カスタマージャーニー
- 目的: 顧客が商品を「購入するまで」のプロセスを最適化
- 対象: 購買意思のある「顧客」
- 範囲: 認知→検討→購入→アフターサービス
- UI例: 商品ページのデザイン、決済ボタンの配置
- ユーザージャーニーマップ
- 目的: ユーザーが製品を「使い続ける」体験を改善
- 対象: 実際に製品を使う「ユーザー」
- 範囲: 登録→日常利用→トラブル解決→継続
- UI例: ダッシュボードの操作性、設定メニューの直感性
【混同の典型例】
- カスタマージャーニーのデータだけでUIを設計
→ 「購入率は上がったが、リピート率が低下」
→ 「機能が埋もれ、サポート問い合わせが増加」
2. 混同がUIに招く3つの致命的な問題
(1)「購入」と「利用」の断絶
- 例:
ECサイトで「購入ボタン」は目立つが、「注文履歴ページ」が使いにくい。
→ 購入後のユーザーが「履歴確認で離脱」→ リピート購入が減少。
(2)隠れたUX課題の見落とし
- 例:
アプリの「新規登録フロー」は最適化済みでも、「主要機能の操作ステップ」が複雑。
→ 登録ユーザーの80%が初回利用後にアンインストール。
(3)短期的成果と長期的信頼のトレードオフ
- 例:
広告クリック率向上のため「誇大表現のボタン」を設置
→ 一時的にコンバージョンは増えるが、ユーザーの不信感が蓄積。
3. ユーザージャーニーマップを軽視したUI設計の失敗ケース
【事例1:フィットネスアプリ】
- カスタマージャーニー偏重の設計:
- 「無料トライアル登録率」を最大化するため、登録フローを極限まで簡略化。
- 結果:
- 登録率は30%向上したが、継続利用率は5%に低下。
- 原因:
- ユーザージャーニーマップ未分析のため、「トレーニングプランの設定が複雑」という課題を見逃す。
【事例2:BtoBクラウドツール】
- カスタマージャーニー偏重の設計:
- 「有料プラン申し込み画面」のCTAを強化。
- 結果:
- 契約数は増加したが、解約率が40%に急増。
- 原因:
- ユーザージャーニーマップ未作成のため、「データインポート機能の操作性が劣悪」という問題を無視。
4. 解決策:UI設計は「2つのジャーニー」を統合せよ
ステップ1:カスタマージャーニーで「購買の壁」を打破
- 焦点: 認知→購入までのタッチポイント改善
- 例: 商品ページの読み込み速度向上、クーポン表示の最適化
ステップ2:ユーザージャーニーマップで「利用の壁」を粉砕
- 焦点: 購入後の日常的なUX改善
- 例: ダッシュボードの情報整理、機能の導線設計見直し
ステップ3:両ジャーニーのデータを統合したUI設計
- 具体例:
- ECサイト:
- カスタマージャーニー:購入画面の「在庫切れ表示」をリアルタイム化
- ユーザージャーニーマップ:購入後の「配送状況トラッキングUI」をシンプルに設計
- SaaSツール:
- カスタマージャーニー:無料トライアル登録時の「プラン比較表」を追加
- ユーザージャーニーマップ:有料契約後の「定期レポート自動作成機能」を導入
- ECサイト:
5. 成功企業が実践する「2つのジャーニー」活用術
【事例:オンライン教育プラットフォーム】
- 課題:
- カスタマージャーニー重視で「無料登録率」は向上したが、有料コース継続率が低迷。
- 解決策:
- ユーザージャーニーマップ作成:
- 「学習画面の進捗管理が不明確」「課題提出フローが煩雑」を発見。
- UI改善:
- 進捗バーと達成度ランクをダッシュボードに追加。
- 課題提出画面を「ドラッグ&ドロップ」方式に変更。
- ユーザージャーニーマップ作成:
- 結果:
- 有料コース継続率が3倍に向上。
結論:UI設計の成功は「購買」と「利用」の両輪にかかる
- カスタマージャーニーだけに依存する設計は、「入り口」だけを磨いて「中身」を疎かにする行為です。
- ユーザージャーニーマップを活用し、「購入後」の体験を徹底的に最適化することで、
- 顧客満足度の向上
- リピート率・解約率の改善
が実現します。
「買わせるUI」と「使い続けさせるUI」は別物です。
両方のジャーニーを可視化し、統合した設計こそが、真にユーザー中心の製品を生み出します。